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外国語の散歩道

北アフリカ

アラビア半島から北アフリカにかけてセム・ハム(アジア・アフリカ)語族(371語)(2.6億人)が広がっています。セム語派(73語)(1.9億人)は、古代文明発祥の地だけに、古代からアッカド(バビロニア・アッシリア)語、フェニキア語、ヘブライ語、アラム語とその後身のシリア語など多くの有力言語が輩出しました。シリア語は東方キリスト教の、ヘブライ語はユダヤ教の宗教用語として現在まで使用され、またヘブライ語(400万人)はイスラエルの国語として復興されました。紀元前六世紀古代ペルシア帝国が興ると共にそれまでのアッカド語に変わってアラム語が国際語となり、その後東ローマ帝国ではギリシア語と並んでシリア語が使用されました。イスラム教勃興後はアラビア語が広がり、現在は北アフリカの大西洋岸モーリタニアにまで達しています。アラビア語(2.1億人)はセム語の特徴をよく保持し、語幹の三子音に様々な母音が付いて派生形を作ります。おまけにアラビア文字では普通は母音を表記しないので、意味が分からないと読むこともできず、辞書を引くのも大変です。また中国語と並んで語彙の豊富な言葉で、辞書なしで読めるようになるには随分かかります。母音はa、i、uの三種ですが、他のセム語同様子音は発音の難しいものが沢山あり、また滑らかに発音するには繰り返し練習が必要です。従って最も難しい言葉の一つであると言えます。かってはエジプト方言が有力でしたが、最近は正則アラビア語と呼ばれるコーランの言語に基づく標準語が盛んになっています。南アラビアもシバの女王の話で象徴されるように貿易の拠点として古くから栄え、紀元前から対岸のエリトリア、エチオピアに渡って国を建てました。その後裔がセム語派のエチオピア諸語(12語)(2200万人)で、古典語であるゲエズ語の他、エチオピアの国語アムハラ語(1900万人)、エリトリアとエチオピア北部のティグリニャ語(400万人)などがあります。いずれも先住のクシ語の影響を大きく受け、語順もSOV型に変わりました。土着のキリスト教が盛んです。

セム・ハム語族には他に、エジプト語派、ベルベル語派、クシ語派、チャド語派があります。アラビア語の進出以前、エジプトでは古代エジプト語の末裔のコプト語が使われていました。ギリシア文字を改良した文字を使用し、十六世紀まで生きた言葉として話され、今もコプト派キリスト教会で儀式に用いられています。リビアからモロッコに至るマグレブ地方ではベルベル諸語(9語)(1000万人)が使用され、今もアトラス山地や砂漠地帯では使われています。そのうちタマシェク語は、サハラ砂漠の民トアレグ人の言葉で、古代リビア文字の血を引くティフィナグ文字が残っています。クシ語派(75語)(29万人)はアフリカの角ソマリアとエチオピアに分布しています。ソマリアはアフリカでは稀な単一民族の国で、ソマリア語(600万人)が国語です。エチオピアでも南部はクシ語派のガラ(オロモ)語(1700万人)が有力です。チャド語派(192語)(2900万人)の代表は遙か南のニジェール、ナイジェリアのハウサ語(3700万人)で、古くから文化の開けたハウサ商人の言語として周辺の国々にも広く普及しています。ハウサ人は古くからイスラム教を採用し、アラビア文字の文献を残しています。

ナイル河上流からサハラ砂漠南縁のニジェール河中流にかけてナイル・サハラ語族(194語)(3100万人)が分布しています。そのうちスーダン南部からウガンダ、ケニア北部には長身の牛牧畜民の間でルオ語(400万人)、マサイ語(54万人)などナイル諸語(53語)(1900万人)が話されています。ルアンダ、ウルンディでバントゥー人を支配したトゥティ人も元はこの系統と思われます。古代エジプトを一時支配し中世紀にはキリスト教王国を建てていたスーダン北部のヌビア人もこれに近縁です。その西側、スーダン西南部からザイール東北部には中央スーダン諸語(64語)(390万人)が分布しています。また、チャド湖周辺にカネム・ボルヌ帝国を建てたサハラ語派のカヌリ人(500万人)、マリ東部にソンガイ帝国を建てたソンガイ人(200万人)もこの語族に属しています。

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