翻訳の泉 翻訳に役立つ情報や翻訳の知識

外国語の散歩道

世界の言語

世界には数千種(たとえば SIL によれば 6500 種)の言語があるといわれ、言語の分類法には、系統的分類と類型的分類があります。ここでは世界の主な言語について系統別にお話ししますが、まず類型的分類についてみておきます。

類型論的分類では、膠着語、孤立語、屈折語、抱合語が区別されます。膠着語は、動詞の後に助動詞、名詞の後に助詞を次々に付加していくもので、日本語や朝鮮語がこれに含まれます。孤立語は、単語の機能がその位置関係によって決まるもので、古代中国語(漢文)がその代表です。屈折語は、動詞や名詞が活用によって様々な機能を表すもので、ラテン語やアラビア語がこれに属します。抱合語は、主語や目的語などを表す諸要素が動詞に付着して一語文を形成するもので、アイヌ語や多くのアメリカ・インディアン語があります。この分類法は形式的なもので系統論に比べて面白くなかったのですが、機械翻訳が現実のものになってきた現在、特に語順による分類は、実用的にも重要になってきました。

日本語の語順は、主語−目的語−動詞(S−O−V)で、名詞の後に後置詞(N−p)である助詞を使用し、形容詞は名詞の前(A−N)に来ます。韓国語や、モンゴル語、トルコ語などのアルタイ諸語、ウラル語の大部分、それに世間には余り知られていませんが、ヒンディー語、ベンガル語などのアーリア系諸語を含めたインドのほとんどの言葉がこの語順です。

これの変形で、形容詞と名詞の順序だけが逆(N−A)のものが、ビルマ語、チベット語の仲間です。

これと対照的なのが、フランス語などのロマンス語で、動詞が目的語の前(S−V−O)に来、名詞の前に前置詞(p−N)を使用し、形容詞は名詞を後から修飾(N−A)します。つまり日本語と語順がほぼ逆になります。ロマンス語の他に、ベトナム語、タイ語、インドネシア語など東南アジアの多くの言葉がこの語順を取ります。

これの変形で、形容詞と名詞の順序が逆(A−N)のものも、英語、ドイツ語などのゲルマン諸語、ロシア語などのスラブ諸語、それに中国語と、有力なものが多数あります。

さらに徹底しているのが、アラビア語で、動詞が最初に来て(V−S−O)となります。おまけにアラビア文字などのセム系文字は右から左へ書くので、その下に日本語の単語訳を付ければそのまま日本語訳ができることになります。アフリカのベルベル諸語やマサイ語、ケルト諸語や、サモア語などのポリネシア諸語もこの語順です。

(V−O−S)の語順を取るものには、マダガスカルのマラガシュ語、メラネシアのフィージー語、メキシコのオトミ語があります。

類型や語順は系統によってほぼ一定していますが、固定したものではありません。インド・アーリア諸語はドラヴィダ語の影響を強く受け、語順もSOV型になり、多くの現代語では助詞まで後置詞を使っています。エチオピアのアムハラ語などは先住のクシ語の影響を受け、語順もVSO型からSOV型に変わりました。ウラル語は本来SOV型ですが、ハンガリー語、フィンランド語は周りの印欧語の影響でSVO型に変わりました。

このほか実用的に重要なのは、言語の属する文化圏です。漢字文化圏に属する日本や韓国、ベトナムでは大量の漢語を取り入れており、かっては公式文書は漢文でした。

イスラム諸国では、アラビア文字を使用し(トルコ、インドネシア、スワヒリ、ウズベクなど近年ローマ字やキリル=ロシア文字を採用したところも多い)、大量のアラビア語を(東方ではペルシア語も)取り入れています。従ってアラビア語を知っていればそれらの言語の学習は非常に楽になるわけです。タンザニアの首都ダルエスサラームは、アラビア語で D"r asSal"m 平安の家と言う意味です。

インドや東南アジアには仏教、ヒンドゥー教が広まり、大量のサンスクリット語が取り入れられています。地名や人名もサンスクリット語由来のものが沢山あります。タイ南部の町ナコンシータマラットは、サンスクリット語 Nagara SrO Darma R"ja またはそのパーリ語形で吉祥法王の都と言う意味です。文字も、今では形こそバラバラですが、同じ系統から出たもので、文字の並べ方は同じです。実はアイウエオも梵字の並べ方を採用したものです。遣唐使時代の留学僧がサンスクリット語の知識を学び応用したものでしょう。上座部仏教(小乗仏教)はスリランカが本山で、十一世紀以来ビルマに根付き、タイ、カンボジア、ラオスにも広まっていきました。これら諸国では寺院でパーリ語が学ばれています。

西欧におけるギリシャ語、ラテン語の影響についてはご存じでしょう。キリル文字(いわゆるロシア文字)やコプト文字はギリシャ文字を元にして作られました。西欧語で「の」を表す前置詞 de、von、of が「から」の意味をも表すのは、ギリシャ語で属格が奪格を兼ねていたからです。

セルビア語はキリル文字を使用し、ギリシア正教徒のセルビア人、モンテネグロ(ツルナゴーラ)人とイスラム教徒のボスニア人が話し、クロアチア語はローマ字を使用し、カトリック教徒のクロアチア人が話していますが、全く同じ言語です。元々は同じ民族が、異なる外国の支配を受け、異なる宗教を信奉したために分かれたのです。

ここでは、地域と系統分類を組み合わせて、世界を10の地域に分けてお話しすることにします。

検索
Google


WWW を検索
サイト内を検索